秘密の地図を描こう

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 目の前のモニターには様々なデーターが流れていく。しかし、その多くはキラの注意を引くものではない。
 それでも、彼に外の世界を教えてくれる。だから、眺めるのが楽しみだった。
 それは今でも変わっていない。
「あまりほめられた趣味じゃないのかもしれないけどね」
 それで助かったことも多いし、と思いながら、適当に覗いていく。
「それに、今はこのくらいしか楽しみがないし」
 レイ達が来ていてくれればともかく、普段は一人だし……と続ける。
「ギルさんだって、それは知っているはずだもんね」
 それでも自分にこれだけのシステムを預けている、と言うことはしてもかまわないと考えてるのではないか。
 そういうことにしておけ、と勝手に結論づけると、キラはネットサーフィンハッキングを続ける。
 テレビのザッピングをするかのように次々と対象を変える動きが不意に止まった。
「……えっと……」
 これはどこのデーターだろうか。
 即座にそれを確認するためにキーボードをたたく。
「やっぱり……」
 どうしようか、とキラは呟いた。
「相談するしかないよね」
 しかし、誰にすればいいのだろう。
「ニコルかな、一番確実なのは」
 彼ならばすぐに連絡が取れるのではないか。本当はレイがいいのかもしれない。しかし、彼はまだアカデミーの訓練生でしかない。いざというときには動けないのだ。
「ギルさんに連絡を取ってもらうには一番いいんだけど」
 こういうときは仕方がないね、と呟く。
「でも、何でこういうときに……」
 それとも、今だから、なのだろうか。
「……なんか、いやな感じ」
 そう言いながらも、手際よく目の前のデーターをコピーしていく。
「もう一度進入するときのために、ルートも確保しておいた方がいいかな」
 言葉は悪いが、久々にわくわくしている。
「うん、そうしよう」
 言葉とともに即座にそちらの作業も始めた。
「後は……ニコルに連絡を取らないといけないね」
 まぁ、それはすぐにできるからいいか。そんなことを考えながら手を動かしていく。
「こちらは、これで良し、っと」
 じゃ、ニコルを呼び出そうか。そう呟くと、キラは端末を取り出した。
「講義中じゃないといいけど」
 もっとも、伝言を残しておけばいいだけか。そう考えを切り替える。
「今日明日にどうこうなるようなものでもないみたいだし」
 それでも放置しておく訳にはいかないだろう。そう考えて、小さなため息をつく。
「でも、気づかなかったら、もっと厄介だしね」
 それが自分だけに降りかかってくるならばまだいい。
 自分一人だけならば、いくらでも解決方法を見いだせるのだ。
 しかし、他の者達まで巻き込まれる可能性があるならば、話は別だろう。特に、大切な者達が危険にさらされるのであれば、だ。
「と言うわけで、送信、と」
 後は、彼からの連絡を待てばいい。
「それまでは、暇かなぁ」
 他のところを覗いていていいよね、と呟く。
「今度はオーブにしようかな」
 ここでは何も見つからないといいんだけど、とキラは付け加える。
 残念なことに、その願いが叶えられることはなかったが。

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最遊釈厄伝